SUS430(111)表面上に偏析したクロムナノクラスターのSTM観察
ステンレス鋼はCrが不動態皮膜を形成するため高い耐食性を示す。よってCr含有率の高いフェライト系ステンレス鋼が高速炉の炉内構造物の材料として期待されています。そこでフェライト系ステンレス鋼であるSUS430(111)表面とフェライト系ステンレス鋼と同じ結晶構造であるFe(111)表面にCrを蒸着・加熱したCr/Fe(111)表面を比較し、その表面の組成および構造を明らかにする研究をしています。
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Fe(111)表面のSTM像 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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Cr/Fe(111)表面のSTM像 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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Cr/Fe(111)表面のSTM像 (500℃で加熱) |
Fe(111)表面のAESスペクトル(上)と表面濃度(下) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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SUS430(111)表面のSTM像 (500℃で加熱) |
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SUS430(111)表面のSTM像 (600℃で加熱) |
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SUS430(111)表面のSTM像 (700℃で加熱 |
SUS430(111)表面のAESスペクトル(上)と表面濃度(下) |
Pd(111)表面上の酸化バナジウムナノメッシュ上のナノドットの創製と局所電子状態
Pd(111)表面上に酸化バナジウムによるナノメッシュを作製し、さらに原子を蒸着することでメッシュの穴(ホール)に原子を閉じ込めナノドットを形成させることで原子・分子の吸着サイトへの応用が期待されている。どの原子ならナノドットを形成するのか、またそのナノドットの局所電子状態・化学結合エネルギー・構成原子数といったナノドットの物性を研究しています。
酸化バナジウムナノメッシュ上のBiに関しては実際に観察された高分解能STM像とシミュレーション結果との比較も行っています。
酸化バナジウムナノメッシュ | ![]() |
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酸化バナジウムナノメッシュ上のBi | ![]() |
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原子分解能STM像 | 右のSTM像におけるラインプロファイル |
Rh(111)表面上におけるBi系二次元合金の創製と原子配列の組成依存性
表面にBi-Pb及びBi-Snの単原子層膜を作製し、STM、LEEDで原子配列、周期配列を観察、AESで表面組成を測定しています。一般的に合金を形成することで物性の改良がなされることは知られていますが三次元バルクでは合金を形成しない系が多くあります。しかし近年、多成分からなる金属単原子層膜においてバルクでは混ざり合わない系でも安定な合金を形成する、いわゆる二次元合金の形成が報告されました。この形成メカニズムは未だ明らかではないため、本研究ではいくつかの二次元合金の形成における元素間二次元相互作用に関する知見を得ることを目的としています。
Bi、PbはRh(111)表面上で特定の吸着サイトを占有しにくく、それぞれ一元素吸着系にて単原子層膜を作製した際にBi-Bi間、Pb-Pb間に反発的な相互作用が働いていることがわかっています。しかしPb/Rh(111)系は単原子層膜の原子密度を増加させても構造対称性に変化がない、Bi/Rh(111)系では原子密度の増加に依存して二回対称から六回対称に構造相転移するという違いがあります。Sn/Rh(111)系ではSn-Sn間に引力的な相互作用が働いていることがわかっています。
ではRh(111)表面にBiとPbもしくはBiとSnを蒸着したらどのような構造の薄膜を形成するのか?その形成メカニズムに関してRh-蒸着元素間やBi-Pb、Bi-Sn間の相互作用に関しての考察を深めています。
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Rh(111)表面上のPbBi二次元合金の 原子分解能STM像 |
Rh(111)表面上のBiのLEEDパターン |
Rh(100)表面上における酸化亜鉛超薄膜の作製と表面構造
原子が規則正しく配列している金属単結晶基板上にある物質による超薄膜を作製した場合、その物質は基板の原子配列の影響を受けてバルクのものとは異なる結晶構造をとることがあります。この場合、物質中の電子の状態も結晶構造に対応して変化し、今までに報告されていない新しい物性の発見が期待できます。
この研究では、排ガス浄化触媒として活躍しているロジウムを金属単結晶基板として用いています。また、その上に透明導電膜や半導体材料として期待されている酸化亜鉛による超薄膜を形成し、その超薄膜の物性解明の一歩として酸化亜鉛超薄膜の結晶構造の解明を行っています。
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Rh(100)表面上の酸化亜鉛超薄膜 | 酸化亜鉛超薄膜のLEEDパターン |
Al系2次元準結晶表面の研究
準結晶とは、結晶では許されない回転対称性に従った原子の配列をした物質であります。本研究室では、Al-Cu-Co系2次元準結晶というxy平面方向に10回対称性を、z方向には周期性を有する物質を扱い、STMを中心にAl-Cu-Co系2次元準結晶表面の原子配列に関する研究をしてきました。最近では、Al系2次元準結晶表面上に薄膜を作製した研究に取り組み、準結晶表面特有の新奇な構造の作製に取り組んでいます。
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Al-Co-Ni 準結晶のLEEDパターン |
〒464-8603 愛知県名古屋市千種区不老町
名古屋大学大学院工学研究科 エネルギー理工学専攻 エネルギーナノ物質創製グループ